
歯列矯正の治療費は高額になることが多く、家計への負担も大きくなります。
しかし、一定の条件を満たせば医療費控除を受けることができ、所得税の還付や住民税の軽減につながります。
近年ではe-Taxによる電子申告が主流となっており、自宅にいながら確定申告を完了させることが可能です。
本記事では、歯列矯正の医療費控除をe-Taxで申告する具体的な方法について、対象条件から必要書類、入力手順まで詳しく解説します。
この記事を読むことで、スムーズに申告を完了させ、適切な控除を受けることができるようになります。
歯列矯正の医療費控除はe-Taxで申告できます

歯列矯正にかかった費用は、治療目的であると認められる場合に医療費控除の対象となり、e-Taxを利用してオンラインで確定申告を行うことができます。
e-Taxは国税庁が提供する電子申告システムで、確定申告書等作成コーナーから申告書を作成し、インターネット経由で税務署に提出することが可能です。
従来の紙による申告と比較して、e-Taxでは24時間いつでも提出でき、還付金の受取も早くなるというメリットがあります。
また、令和5年分以降の申告では、医療費の領収書を提出する必要がなく、代わりに医療費控除の明細書を作成して提出し、領収書は5年間自宅で保管することになっています。
e-Taxでの申告方式には、マイナンバーカード方式とID・パスワード方式の2種類があり、どちらかを選択して申告を行います。
なぜ歯列矯正でe-Tax申告が推奨されるのか

e-Taxによる申告の利点
まず、e-Taxでの申告が推奨される理由として、手続きの効率性と正確性の向上が挙げられます。
紙の申告書では手書きで記入する必要があり、計算ミスや記入漏れが発生しやすいですが、e-Taxの確定申告書等作成コーナーでは自動計算機能があるため、入力した金額をもとに控除額や還付額が自動的に算出されます。
また、マイナポータル連携を活用すると、医療費通知データを自動で取り込むことができ、入力の手間を大幅に削減できます
さらに、e-Taxでは提出後すぐに受付結果を確認でき、不備があった場合も早期に対応できるため、申告手続き全体がスムーズに進みます。
医療費控除の対象となる条件
次に、歯列矯正が医療費控除の対象となるための条件について説明します。
国税庁によると、発育段階にある子どもの不正咬合の矯正治療は、成長に伴う機能改善のために必要な治療として医療費控除の対象になります。
また、年齢や目的から判断して、治療上必要と認められる歯列矯正も対象となります。
具体的には、噛み合わせの改善、顎関節症の治療、発音障害の改善など、機能的な問題を解決するための矯正治療が該当します。
一方で、容貌を美化することを主な目的とする矯正治療は、医療費控除の対象外となります。
成人の歯列矯正の場合、治療目的であることを証明するために、歯科医師による診断書の準備が必要になる場合があります。
医療費控除の計算方法
医療費控除額の計算方法についても理解しておく必要があります。
医療費控除は、1年間に支払った医療費の合計額から、保険金などで補てんされた金額を差し引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)を差し引いた金額が控除額となります。
例えば、年間の医療費が80万円で、保険金による補てんが10万円あった場合、80万円-10万円-10万円=60万円が医療費控除額となります。
この控除額に所得税率を乗じた金額が実際の還付額となり、さらに翌年度の住民税も軽減されます。
申告期限と提出方法
確定申告の提出期限は、原則として翌年の2月16日から3月15日までとなっています。
ただし、給与所得者が医療費控除のみを申告する場合は還付申告となり、1月1日から5年間は申告が可能です。
e-Taxでの申告は、確定申告期間中であれば24時間いつでも送信できるため、税務署の開庁時間を気にする必要がありません。
また、e-Taxで申告した場合、紙で申告した場合と比較して還付金の処理が早く、通常3週間程度で還付されます。
e-Taxで歯列矯正の医療費控除を申告する具体的な手順
事前準備:必要なものを揃える
まず、e-Taxでの申告を始める前に、必要なものを準備します。
第一に、e-Taxでの申告方式を選択する必要があります。
マイナンバーカード方式を利用する場合は、マイナンバーカードとICカードリーダライタ、またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォンが必要です。
ID・パスワード方式を利用する場合は、事前に税務署で本人確認を受けて発行されたID(利用者識別番号)とパスワードが必要になります。
第二に、医療費に関する書類を準備します。
具体的には、歯科医院から受け取った領収書、医療費の明細(支払った医療費の内訳)、公共交通機関を利用した場合の交通費の記録などです。
領収書は提出不要ですが、税務署から求められた場合に提示できるよう、5年間保管する義務があります。
第三に、所得に関する書類として、給与所得者の場合は源泉徴収票、事業所得者の場合は帳簿などを準備します。
医療費控除の明細書を作成する
次に、医療費控除の明細書を作成します。
e-Taxの確定申告書等作成コーナーにアクセスし、「医療費控除の明細書」の入力画面を開きます。
入力方法には、医療費通知データを使う方法、医療費の領収書から直接入力する方法、あらかじめ作成したCSVファイルを読み込む方法の3つがあります。
医療費通知データを使う場合は、マイナポータルと連携することで、健康保険組合などから提供される医療費通知情報を自動で取り込むことができます。
この方法では入力の手間が大幅に削減され、入力ミスも防ぐことができます。
領収書から直接入力する場合は、医療を受けた人ごと、病院・薬局ごとに、支払った医療費の合計額を入力します。
歯列矯正の場合、治療を受けた家族の氏名、医療機関名(歯科医院名)、支払った金額を正確に入力します。
また、通院のために公共交通機関(電車・バス)を利用した場合、その交通費も医療費控除の対象となります。
ただし、自家用車のガソリン代や駐車場代は対象外となるため注意が必要です。
確定申告書を作成して送信する
医療費控除の明細書の入力が完了したら、確定申告書本体を作成します。
確定申告書等作成コーナーの指示に従って、収入金額や所得金額を入力し、医療費控除を含む各種控除を入力していきます。
入力が完了すると、還付金額が自動的に計算されて表示されます。
内容を確認し、間違いがなければ、マイナンバーカード方式またはID・パスワード方式で電子署名を行い、e-Taxで送信します。
送信が完了すると、受付番号が表示され、メッセージボックスで受付結果を確認することができます。
送信後は、申告データをPDF形式で保存しておくことをおすすめします。
マイナポータル連携の活用方法
さらに効率的に申告を行うために、マイナポータル連携の活用方法を説明します。
マイナポータルとは、政府が運営するオンラインサービスで、マイナンバーカードを使って様々な行政手続きを行うことができます。
e-Taxとマイナポータルを連携させることで、医療費通知情報や生命保険料控除証明書などのデータを自動で取り込むことが可能になります。
具体的には、確定申告書等作成コーナーで「マイナポータル連携」を選択し、マイナンバーカードで認証を行います。
その後、取り込みたいデータを選択すると、自動で申告書に反映されます。
この方法を使えば、医療費の入力作業が大幅に削減され、正確性も向上します。
歯列矯正の医療費控除に関する具体例

ケース1:子どもの不正咬合の矯正治療
具体例の一つ目として、発育段階にある子どもの不正咬合の矯正治療を紹介します。
例えば、10歳の子どもが歯並びの悪さによる噛み合わせの問題を改善するために、歯科医師の診断を受けて歯列矯正を開始したケースです。
この場合、矯正装置の費用として年間50万円、毎月の調整料として年間12万円、合計62万円を支払いました。
また、通院のために電車を利用し、年間の交通費が2万円かかりました。
この家庭では他に家族の医療費として8万円を支払っており、医療費の合計は72万円となります。
保険金などによる補てんはなく、総所得金額が400万円の場合、72万円-10万円=62万円が医療費控除額となります。
所得税率が20%の場合、62万円×20%=12万4千円が還付され、さらに翌年度の住民税も6万2千円(10%相当)軽減されます。
このケースでは、子どもの成長に伴う機能改善のための治療であることが明確なため、医療費控除の対象として認められやすいと言えます。
ケース2:成人の噛み合わせ改善のための矯正治療
二つ目の具体例として、成人が噛み合わせの改善のために行った矯正治療を紹介します。
例えば、30歳の会社員が顎関節症の症状(顎の痛み、口が開きにくいなど)に悩まされ、歯科医師の診断を受けたところ、不正咬合が原因であることが判明し、治療目的で歯列矯正を開始しました。
矯正治療費として年間90万円を支払い、歯科医師による診断書も取得しました(診断書作成料5千円)。
通院のためにバスと電車を利用し、年間の交通費は3万円でした。
この方の年間医療費の合計は93万5千円となります。
保険金による補てんはなく、総所得金額が500万円の場合、93万5千円-10万円=83万5千円が医療費控除額となります。
所得税率が20%の場合、83万5千円×20%=16万7千円が還付され、住民税も8万3千500円軽減されます。
成人の場合、治療目的であることを明確にするために診断書を準備することが重要です。
診断書には、症状、治療の必要性、治療計画などが記載されており、税務署から問い合わせがあった場合に有効な証明資料となります。
ケース3:複数年にわたる矯正治療の申告
三つ目の具体例として、複数年にわたる矯正治療の申告方法を紹介します。
歯列矯正は通常2年から3年の期間を要するため、治療費も複数年に分けて支払うことが一般的です。
例えば、15歳の子どもが2年間の矯正治療を受け、初年度に装置代として60万円、2年目に調整料として年間15万円を支払ったケースです。
医療費控除は各年ごとに申告するため、初年度は医療費60万円から10万円を差し引いた50万円が控除額となります。
2年目は、調整料15万円に加えて家族の他の医療費が10万円あった場合、合計25万円から10万円を差し引いた15万円が控除額となります。
このように、支払った年ごとに医療費控除を申告することで、複数年にわたって税負担を軽減することができます。
e-Taxでは過去5年分の還付申告が可能なため、申告を忘れていた年がある場合でも遡って申告することができます。
ケース4:医療費通知を活用した申告
四つ目の具体例として、医療費通知を活用した申告方法を紹介します。
健康保険組合や共済組合などから送付される「医療費通知」(医療費のお知らせ)には、1年間に受診した医療機関名、支払った医療費の金額などが記載されています。
この医療費通知データをマイナポータル経由でe-Taxに取り込むことで、入力作業を大幅に削減できます。
例えば、家族4人で年間に受診した医療機関が20か所、医療費の総額が85万円だった場合、通常であればすべての領収書を確認しながら入力する必要があります。
しかし、医療費通知データを活用すれば、ボタン一つでデータが取り込まれ、確認作業のみで申告書の作成が完了します。
ただし、医療費通知に記載されていない医療費(歯列矯正の自由診療費用など)については、別途手動で入力する必要があります。
また、通院のための交通費は医療費通知には記載されないため、記録を残しておき、手動で入力します。
歯列矯正の医療費控除申告で注意すべきポイント
対象外となるケースを理解する
医療費控除を申告する際に、対象外となるケースを正しく理解しておくことが重要です。
まず、美容目的の歯列矯正は医療費控除の対象外となります。
見た目を良くすることのみを目的とした矯正治療は、治療上の必要性が認められないため、控除を受けることができません。
また、デンタルローンやクレジットカードの分割払いを利用した場合、利息や手数料は医療費控除の対象外となります。
対象となるのは治療費本体のみで、金利や手数料は含まれません。
さらに、自家用車で通院した場合のガソリン代や駐車場代も対象外です。
公共交通機関を利用することが困難な場合にタクシーを利用した場合は対象になることがありますが、その必要性を説明できることが条件となります。
領収書と記録の適切な保管方法
次に、領収書と記録の適切な保管方法について説明します。
令和5年分以降の確定申告では、医療費の領収書を提出する必要はありませんが、税務署から提示を求められた場合に備えて5年間保管する義務があります。
領収書は、年度ごと、医療機関ごとに整理して保管しておくと、後から確認する際に便利です。
また、クリアファイルや封筒に入れて、湿気や直射日光を避けた場所に保管することで、印字の劣化を防ぐことができます。
通院のための交通費については、領収書が発行されない場合が多いため、通院日、区間、金額を記録したノートやスプレッドシートを作成しておくことをおすすめします。
記録には日付、通院者の氏名、医療機関名、交通手段、金額を明記しておくと、申告時にスムーズに入力できます。
家族の医療費を合算する際のポイント
医療費控除は、生計を一にする家族の医療費を合算して申告することができます。
「生計を一にする」とは、同居している必要はなく、学生として一人暮らしをしている子どもや、別居している親に生活費を仕送りしている場合なども含まれます。
家族の医療費を合算する場合、所得の高い人が申告する方が税率が高くなるため、還付金額が多くなる傾向があります。
例えば、夫の所得税率が20%で妻の所得税率が10%の場合、夫が家族全員分の医療費をまとめて申告した方が、還付金額が大きくなります。
ただし、配偶者や扶養親族として控除を受けている家族の医療費を合算する場合でも、支払った人(実際に費用を負担した人)が申告する必要があります。
補てんされた金額の適切な処理
保険金や給付金によって補てんされた金額がある場合、その金額を医療費から差し引く必要があります。
具体的には、生命保険会社から受け取った入院給付金、健康保険から支給される高額療養費、出産育児一時金などが該当します。
補てん金額は、その給付の対象となった医療費から差し引きます。
例えば、歯列矯正費用が60万円で、他の医療費が30万円あり、生命保険から入院給付金10万円を受け取った場合、入院給付金は入院に関する医療費から差し引き、歯列矯正費用からは差し引きません。
補てん金額が特定の医療費を上回る場合でも、他の医療費から差し引く必要はありません。
申告後の確認と訂正方法
最後に、申告後の確認と訂正方法について説明します。
e-Taxで申告を送信した後は、メッセージボックスで受付結果を確認し、受付が完了しているか確認します。
もし申告内容に誤りを発見した場合、申告期限内であれば「訂正申告」として再度送信することができます。
申告期限後に誤りを発見した場合は、「更正の請求」という手続きを行います。
更正の請求は、還付金額が少なかった場合や、控除額に誤りがあった場合に、正しい金額での再計算を求める手続きです。
更正の請求は、申告期限から5年以内であれば行うことができます。
e-Taxでは、確定申告書等作成コーナーから「更正の請求書」を作成して送信することが可能です。
まとめ:歯列矯正の医療費控除をe-Taxで確実に申告しましょう
歯列矯正の医療費控除は、治療目的であると認められる場合に、e-Taxを利用してオンラインで確定申告を行うことができます。
対象となるのは、発育段階にある子どもの不正咬合の矯正や、噛み合わせ・顎関節など機能改善のための矯正治療であり、美容目的の矯正は対象外となります。
e-Taxでの申告には、マイナンバーカード方式またはID・パスワード方式があり、マイナポータル連携を活用することで医療費通知データを自動取込でき、入力の手間を大幅に削減できます。
申告に必要なものは、医療費の領収書(5年間保管)、医療費控除の明細書、源泉徴収票などの所得証明書類です。
確定申告書等作成コーナーで申告書を作成し、医療費控除の明細書に必要事項を入力して、e-Taxで送信することで手続きが完了します。
医療費控除額は、年間の医療費総額から保険金などによる補てん金額と10万円(または総所得金額等の5%)を差し引いた金額となり、この控除額に所得税率を乗じた金額が還付され、翌年度の住民税も軽減されます。
申告の際は、対象外となるケース(美容目的、利息・手数料、自家用車の費用)を理解し、領収書や交通費の記録を適切に保管し、補てん金額を正しく処理することが重要です。
今すぐe-Taxでの申告準備を始めましょう
歯列矯正の治療費は高額になりますが、医療費控除を適切に申告することで、大きな税負担の軽減につながります。
e-Taxを利用すれば、自宅にいながら24時間いつでも申告でき、還付金の受取も早くなります。
まずは、マイナンバーカードの取得やID・パスワード方式の申請など、e-Taxの利用準備から始めてみてください。
そして、医療費の領収書や交通費の記録を整理し、確定申告の時期に備えましょう。
国税庁の確定申告書等作成コーナーには詳しい入力ガイドがあり、初めての方でも画面の指示に従って進めることができます。
適切に医療費控除を受けることで、家計への負担を軽減し、より安心して治療を続けることができます。
今年支払った医療費がある方は、ぜひこの機会にe-Taxでの確定申告に挑戦してみてください。